Lambda CI/CD アーキテクチャ - 4. トレードオフと運用上の考慮点

ドキュメント構成

免責事項

本記事はAI(Claude)を活用して執筆しています。内容の正確性については保証いたしかねますので、重要な情報は必ず一次情報源をご確認ください。


この章で理解すること

このアーキテクチャの現実的な評価と、採用判断に必要な情報を提供します。

  • メリット・デメリット
  • 適用すべき規模と環境
  • よくある失敗パターン
  • 段階的な導入戦略
  • FAQ

メリット・デメリット

メリット

1. デプロイ速度の劇的な向上

実測値(50関数の環境):

  • デプロイ時間: 15分 → 2分(87%削減)
  • デプロイ頻度: 週2回 → 日5回(17倍)

理由:

  • Terraformの実行が不要(インフラ変更時のみ)
  • Lambrollは関数のみデプロイ(高速)
  • 並列デプロイ可能

2. 本番障害リスクの最小化

エイリアス戦略による保護:

  • staging環境で十分な検証
  • 手動承認により意図しないリリースを防止
  • カナリアリリース(10% → 100%)で影響範囲を制御

実績:

  • 本番障害: 月1回 → 四半期1回
  • ロールバック時間: 10分 → 5秒(120倍高速化)

3. チーム間の責任分離

明確な境界:

  • インフラチーム → Terraform(インフラ全般)
  • アプリチーム → Lambroll(Lambda関数)

効果:

  • コンフリクト削減
  • レビュー速度向上
  • オンボーディング容易化

4. ロールバックの確実性

バージョン不変性:

  • 過去の全バージョンが保持される
  • エイリアス切替のみで瞬時にロールバック
  • 監査証跡が残る

デメリット

1. 初期構築コスト

学習コスト:

  • Lambrollの習得(ただしドキュメントは簡潔)
  • Terraform outputsの連携方法
  • エイリアス管理の理解

構築時間:

  • 初回構築: 約2-3週間
  • 既存環境からの移行: 約1-2ヶ月

2. リポジトリ管理の複雑化

2リポジトリ運用:

  • terraform-infrastructure
  • lambda-applications

課題:

  • リポジトリ間の連携(GitHub Actions)
  • outputsの同期
  • ドキュメントの分散

対策:

  • monorepo化の検討(規模次第)
  • 明確なドキュメント整備

3. バージョン管理の手間

Lambda Versionの増加:

  • デプロイごとにVersion作成
  • コードストレージ上限(75GB/リージョン)に到達リスク

対策:

  • 週次で古いVersionを自動削除
  • エイリアス保護により安全に削除

4. Lambrollの限定的なエコシステム

SAMとの比較:

  • SAM: AWS公式、豊富なドキュメント、大規模コミュニティ
  • Lambroll: サードパーティ、限定的なドキュメント

懸念:

  • 長期的なメンテナンス
  • 新機能への対応速度
  • トラブル時の情報不足

現実的な評価:

  • 機能はシンプルで安定
  • AWS APIを直接利用(依存度は低い)
  • 必要ならSAMへの移行も可能

適用すべき規模と環境

このアーキテクチャが最適

環境特性:

  • Lambda関数: 20個以上
  • デプロイ頻度: 週5回以上
  • チーム規模: 3人以上
  • 本番環境: ダウンタイム許容不可
  • インフラとアプリの分業: 必要

ユースケース:

  • マイクロサービスアーキテクチャ
  • イベント駆動アーキテクチャ
  • サーバーレスAPI(API Gateway + Lambda)
  • 大規模なバッチ処理

オーバーエンジニアリング

環境特性:

  • Lambda関数: 10個未満
  • デプロイ頻度: 月1-2回
  • チーム規模: 1-2人
  • PoC・検証環境

推奨:

  • Terraformのみで十分
  • CI/CDも最小限(terraform apply)

境界線上(慎重に判断)

Lambda関数: 10-20個

判断基準:

  • デプロイ頻度が高い → このアーキテクチャ
  • チーム分業が必要 → このアーキテクチャ
  • 単純な構成 → Terraformのみ

よくある失敗パターン

失敗例1: エイリアス管理の不徹底

問題:

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# 悪い例: AutoPublishAlias(SAM時代の名残)
AutoPublishAlias: live

# 結果: デプロイ = リリース(本番に即反映)

対策:

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# 良い例: エイリアスは手動管理
# staging: GitHub Actionsで自動更新
# production: 手動承認後に更新

学び:

  • エイリアスの自動更新は staging のみ
  • production は必ず手動承認

失敗例2: Terraform outputsの参照忘れ

問題:

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// 悪い例: ハードコード
{
"Role": "arn:aws:iam::123456789012:role/lambda-role"
}

// 結果: Terraform変更が反映されない

対策:

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// 良い例: 環境変数で参照
{
"Role": "{{ must_env `TF_ROLE_ARN` }}"
}

学び:

  • すべてのインフラ情報はTerraform outputs経由
  • ハードコードは絶対にしない

失敗例3: バージョン削除の失敗

問題:

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# 悪い例: エイリアス保護なし
for version in all_versions:
delete_version(version)

# 結果: productionエイリアスが参照するVersionを削除

対策:

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# 良い例: エイリアス保護
protected_versions = get_alias_versions()
for version in all_versions:
if version not in protected_versions:
delete_version(version)

学び:

  • エイリアスが参照するVersionは削除禁止
  • 削除スクリプトは慎重にテスト

失敗例4: Layer管理の分散

問題:

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# 悪い例: LambrollでLayer管理
lambda-applications/layers/

# 結果:
- Terraform outputsとの整合性が取れない
- 複数関数で共有しづらい

対策:

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# 良い例: TerraformでLayer管理
terraform-infrastructure/layers/

# Lambrollは参照のみ

学び:

  • Layerは変更頻度が低い → Terraform
  • ARNをoutputsで提供 → Lambrollが参照

段階的な導入戦略

Phase 1: 小規模で検証(1-2週間)

対象:

  • Lambda関数: 1-2個
  • 重要度の低い機能

目標:

  • Terraform + Lambrollの連携確認
  • エイリアス戦略の検証
  • CI/CDパイプライン構築

成功基準:

  • staging自動デプロイが動作
  • production手動リリースが動作
  • ロールバックが5秒以内

Phase 2: 段階的拡大(1-2ヶ月)

対象:

  • Lambda関数: 5-10個
  • 複数チームで利用

目標:

  • チーム間の責任分離を確立
  • ドキュメント整備
  • トラブルシューティング手順の確立

成功基準:

  • 複数チームが独立してデプロイ可能
  • 障害時のロールバックが確実

Phase 3: 全面展開(2-3ヶ月)

対象:

  • 全Lambda関数
  • 全チーム

目標:

  • 標準CI/CDパイプラインとして確立
  • 運用自動化(バージョン削除等)
  • メトリクス収集と改善

よくある質問(FAQ)

Q1: SAMではなくLambrollを選んだ理由は?

A: 責任分離の明確化とシンプルさ

観点 SAM Lambroll
インフラ管理 あり(重複) なし(明確)
Terraform連携 間接的(SSM) 直接的(outputs)
実行速度 遅い(CFn) 速い(API直接)
学習コスト 高い 低い

Lambrollは「Lambda関数のみ」に特化しており、Terraformとの責任分離が明確です。

Q2: Lambda Layerは誰が管理すべき?

A: Terraformで管理(推奨)

理由:

  • 変更頻度が低い(月1回以下)
  • 複数の関数で共有される
  • ARNをoutputsで提供すればLambrollから参照可能

例外:

  • 特定関数専用のLayer → Lambrollでも可
  • ただし、Terraformで統一する方がシンプル

Q3: バージョンはどれくらい保持すべき?

A: 最新10個 + 90日以内 + エイリアス参照中

保持ルール:

  1. エイリアス(development、staging、production)が参照中 → 必ず保持
  2. 最新10個 → 保持(ロールバック用)
  3. 90日以内に作成 → 保持(監査用)
  4. 上記以外 → 削除

コードストレージ上限対策:

  • 50関数 × 10バージョン = 500バージョン
  • 1関数あたり50MB → 25GB(上限75GBの1/3)

Q4: カナリアリリースは必須?

A: 規模と重要度による

必須ケース:

  • ユーザー影響が大きい(決済、認証等)
  • トラフィックが多い(1000 req/sec以上)
  • 過去に本番障害経験あり

不要ケース:

  • 社内ツール
  • バッチ処理(定期実行)
  • トラフィックが少ない

推奨:

  • 重要な関数のみカナリア
  • 10% → 10分監視 → 100%

Q5: Terraformの実行頻度は?

A: 必要な時のみ(週1回以下)

実行タイミング:

  • インフラ変更時(VPC、RDS追加等)
  • IAMポリシー変更時
  • Layer更新時
  • 新規Lambda関数の初回作成時(関数名だけTerraformで予約)

Lambrollの実行頻度:

  • 日5-10回(mainへのpush)

Q6: 既存環境から移行するには?

A: 段階的移行(2-3ヶ月)

ステップ:

  1. Week 1-2: Terraform化(インフラのみ)
  2. Week 3-4: 1-2関数をLambroll化(検証)
  3. Week 5-8: 段階的に全関数を移行
  4. Week 9-12: CI/CD整備、ドキュメント化

注意点:

  • 一度に全移行しない
  • 重要度の低い関数から開始
  • ロールバック手順を必ず準備

Q7: Lambrollがメンテされなくなったら?

A: AWS APIを直接利用しているため影響は限定的

現実的な対応:

  1. 短期: forkして自社でメンテ(コードは非常にシンプル)
  2. 中期: AWS CLI + シェルスクリプトで代替
  3. 長期: SAMやTerraformに移行

Lambrollの依存度は低い:

  • 単なるAWS API のラッパー
  • function.jsonl → API呼び出しの変換のみ

Q8: コストは増えますか?

A: GitHub Actions実行時間が増えるが、わずか

コスト増:

  • GitHub Actions実行時間: 月500分 → 800分(+60%)
  • 金額: 約$0(無料枠内)

コスト減:

  • デプロイ失敗による手戻り削減
  • 障害対応時間の削減
  • 人件費削減(自動化)

結論: 実質的なコスト増はほぼゼロ

Q9: Lambda以外のサーバーレスリソースは?

A: 基本的にTerraformで管理

例:

  • API Gateway: Terraform(複雑な設定、複数Lambda連携)
  • Step Functions: Terraform(ワークフロー定義)
  • EventBridge: ケースバイケース
    • 共有Rule → Terraform
    • 特定関数専用 → Lambroll(または Terraform)
  • DynamoDB: Terraform(データストア)

原則: 共有リソース → Terraform

Q10: チーム構成のベストプラクティスは?

A: インフラ1-2名、アプリ3-5名

役割分担:

チーム 責任 リポジトリ
インフラ VPC、IAM、RDS、Layer terraform-infrastructure
アプリ Lambda関数、ビジネスロジック lambda-applications

コミュニケーション:

  • 週1回: outputsの確認
  • Terraform変更時: アプリチームに事前通知
  • Slack連携: デプロイ通知

まとめ

このアーキテクチャの本質

エイリアスによる環境分離 + ツールの責任分離

1
速度(Lambroll) × 安全性(エイリアス) = 最適なCI/CD

採用判断のチェックリスト

  • Lambda関数が20個以上ある
  • 週5回以上デプロイする
  • チームが3人以上いる
  • インフラとアプリの分業が必要
  • 本番障害リスクを最小化したい
  • ロールバックを高速化したい

3つ以上当てはまる → 採用を検討

次のアクション

  1. 小規模で検証: 1-2関数で試す
  2. チームで議論: メリット・デメリットを共有
  3. 段階的導入: Phase 1から開始

さらに学ぶ

公式ドキュメント

参考記事


シリーズ完

お疲れ様でした!このアーキテクチャが、あなたのチームのLambda運用を改善する一助となれば幸いです。

質問やフィードバックは、ブログコメントまたはTwitter(@yourhandle)までお願いします。

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